6198ウルグアイ選挙、左翼敗北の3つの鍵(191129)

 2005年にフレンテ・アンプリオがウルグアイ政権について以来、ラテンアメリカの左翼政府は、けいれん的な瞬間を経験した。

タバレ・バスケス(2005-2010、2015-2020)、ホセ・ムヒカ (2010-2015)両大統領は、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、エクアドル、ベネズエラでの政治的混乱と危機の目撃者である。

 この間、ウルグアイおいて、彼らの進歩的な政策が15年間にわたって、大きなショックを受けずに生き残っていた。

 フレンテ・アンプリオが中道右派のルイス・ラカジェ・ポウに敗れたのはなぜか?

 ウルグアイの政治学者で歴史家のヘラルド・カエターノは、フレンテ・アンプリオに大きな過失はなかったが、有権者のゆっくりとした意見の変化に気が付かなかったと指摘する。

 「前政権は15年の間、政権に就いて、摩耗していた。」とカエターノはBBC Mundoに語った。

 また、ルイス・ラカレ・ポウの中道右派への政権移行は、他のラテンアメリカにとって驚きではないと考えている。

 そして、「本当に静かな」交替は、「この国では誰もが、物事が投票で決着することを知っている。」ことの表れである。

 その意味では、バスケスとムヒカムの政権は、この地域ではめったに見られないリベラルな手法の故に、「歓迎の別れ」と共に去っていった。

 その政策の中には、マリファナの合法化、妊娠中絶の決定権、夫婦間の同権、賃金や年金の改善、貧困の低減、ほぼ8%の 経済成長などの社会政策も含まれていた。

 しかし、3つの要因で、フレンテ・アンプリオの権力喪失を説明できる。

1.社会の安全

 現在のウルグアイにおいて、最大の懸念であり、改善を見せていないのが社会の安全問題である。

 他のラテンアメリカ諸国と異なり、ウルグアイが麻薬グループの暴力事件に悩むようになったのは最近のことである。

 この現象により、2018年の殺人は前年に比べて45.8%増加した、と政府は今年3月に報告した。これに加えて、盗難、家庭内暴力、性暴力が増加している。

「指数関数的に増加した犯罪に対応して恐怖心も高まり、ウルグアイ人にとって、安全問題は常に重視してきたため、この現象は大きなショックを与えた。」カエターノは説明する。

 ウルグアイのエコノミストであり、実業家であるローラ・ラフォは、BBC Mundoに対し、民間部門の不安は主に中小規模商業に打撃を与えていると語る。

「商店や近隣に対する武装強盗があり、その影響を最も受けるのは中小企業であり、大きな不満を生み出している。商店は何度も強奪されている。」

 企業家に対する調査では、2015年の政府の非支持率は45%だったが、今年の選挙前には74%に達した。

 政府に対する不満は、治安問題が最も高く、教育、財政、国際競争力などがこれに続いた、とラフォは説明する。

 カエターノによれば、バスケス政府は警察を近代化したが、治安問題に対応できなかった。

「確かに、政策は全くの失敗というわけではなかったが、ウルグアイに課せられた巨大な課題に対応できなかった。」

2.停滞した経済

 ウルグアイは、フレンテ・アンプリオのもと、ラテンアメリカにおいて最も高い国内総生産(GDP)の伸びを示した国の一つであり、2010年には最大年率7.8%に達した。

 しかしそれ以降、様々な指標が減少し始め、ウルグアイ経済の停滞が始まった。

「2015年以降、ウルグアイ経済の景気後退はなかったが、成長率は緩やかに低下した。今年は0.5%と予測されており、経済の足取りは、政治とは一致しないようだ。」とカエターノ。

 投資は減少し始め、他方、財政赤字(GDPの5%)、失業率(9.5%)は増加、ドル高(2015年の1ドルあたり23ペソから現在は37ペソ)、また物価は上昇し、家計を直撃している。さらに、ウルグアイの燃料はラテンアメリカで最も高価である。

「経済政策に積極性を欠いていたし、タイムリーでもなかった。支出を削減する意図もなかった。」と経済学者のローラ・ラフォは言う。

「意思決定の欠如については、間違った意思決定だけでなく、意思決定の麻痺が指摘できる。選挙の時期にはよくあることではある。」

3. 衰退への無対応

 治安と経済停滞は、フレンテ・アンプリオの衰退の最大要因である。

「15年間の政権の結果、常に損耗がありるのは明らかである。」とカエターノは言う。彼はフレンテ・アンプリオが野党のより優れたキャンペーンに突き当たったことも指摘している。

 ルイス・ラカジェ・ポウは、中道から極右までの5つの野党による「多色」連合を生み出し、政府に対するすべての批判を集約させた。

「このため、選挙の第1ラウンドと第2ラウンドでフレンテ・アンプリオは、全野党と戦い、最終的に敗北につながった。」と政治学者は説明する。

 これらの選挙におけるフレンテ・アンプリオの候補者、ダニエル・マルティネスは、第一ラウンドでは1%強をわずかに上回る票を得たものの、勝利宣言を避けた。

 カエターノによると、それはバスケスら指導者の不興を買いバスケス自身がラカジェを祝福したと言う。

 今週11月28日の木曜、3代にわたるフレンテ・アンプリオに代わって権力を握る国民党の必然的な勝利となった。

(BBC Mundo(2019/11/29):Elecciones en Uruguay: 3 claves que explican la derrota del izquierdista Frente Amplio tras 15 años en el poder)

ラテンアメリカから見た世界と日本

2004年9月から2012年2月までの約7年半の期間、「ラテンアメリカから見ると」のタイトルでブログを維持していましたが、力を入れすぎて目が痛くなり、撤退しました(通巻6175号)。  スペイン語の勉強を再開したこともあって、ブログも再開しました。

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