6194ベネズエラ、経済不況後の石油増産(191217)

 ベネズエラの石油生産は少しずつ回復している。

 石油輸出国機構(OPEC)の最近の情報では、11月まで3ヶ月連続で増加したとしている。ロイター通信は、11月の生産は前月に比べて20%増加したと報告した。

 アナリストの一部は、生産が減少し、国営石油会社(PDVSA)の生産能力が低下した近年と比べ、「注目すべきトレンドの変化」だと指摘する。

 原油の生産と輸出は、伝統的にこの国経済の原動力であり、国家の資金調達の主要な源泉の1つであったが、近年では歴史的な低下を示していた。

 原油生産の増加は、同国の深刻な経済危機と米国による制裁の影響にもかかわらず、起こっている。

 ベネズエラ石油生産量を正確に推定することは非常に困難であり、べーカー石油政策研究所のフランシスコ・モナルディは最近、様々な調査組織から発表される「数値に多くの相違がある。」と警告している。「ベネズエラ政府は、真の生産高がを隠そうとしている。」。ベネズエラの通信省は、石油生産に関する情報の要請に応じなかった。

 最も頻繁に使用されるデータはOPECの月次レポートで 、政府が提供するデータと、さまざま情報からの2次ソースであるが、政府のデータは専門家の試算値を上回るのが普通である。

 二次情報源に基くOPECの生産推定値では、9月は644,000バレル/日で、10月は687,000バレル/日に増加した。PDVSAによると、実際の数値はこれより高く、10月に761,000バレル/日に達した。

 ロイターによると、11月はさらに大きく上昇し、920,000バレル/日を超えた。

 ベネズエラ石油産業の専門家ルイス・オリベロスは、BBCMundoに、「OPECに伝えられていない部分があるため、PDVSAの総生産量は現在1日あたり約100万バレルである。」と語った。

 真実の数値ががどうであれ、何年にもわたる衰退後の新しいニュースである。

 専門家の大多数によると、保全と投資の不足、技術者の喪失が、PDVSAが生産能力を失った理由である。

 ピーク時期には、1日あたり約250万バレルと現在の水準を遙に上回る水準で生産していた。

 ニコラス・マドゥーロ大統領の退陣を策したトランプ政権の制裁(1月)がさらにベネズエラの情勢を悪化させた。

 この制裁措置が8月に延長され、ベネズエラの国家、企業と取引した企業は処罰さることとなった。

「これにより、 中国とインドなどの重要な常連的輸入国は、ベネズエラ原油の購入を停止した。」とモナルディは説明する。 実際、中国とインドは米国からの制裁にさらされることを望まず、PDVSAからの購入をやめた。

 モナルディは、「この点に関して公的な情報はないが、制裁適用に緩和があった。」と述べた。

 米国の制裁措置が残っているにもかかわらず、何らかの理由でベネズエラの石油は中国、インド、その他の場所に再び輸入されている。

 この分野の知識豊富な情報源によると、PDVSAと取引しようと戻ってきた前述のリライアンスや、スペインのレプソルなどの国際的なエネルギー大手企業がPDVSAの在庫を吹き払い、生産への道を開いた。

 取引の再開を裏付ける法的枠組みは明確ではない。米国財務省の外国資産管理局は通常、その制裁制度に対する特定の例外を認める一般的な免除措置を発表するが、特定の企業や事業体に与えられた措置は公開されないのが通常である。制裁免除対象の企業は、これらの措置のいずれかで運営されている可能性がある。

 いずれにせよ、PDVSA事業の再復活は、ベネズエラ問題に関するトランプ政権の関心の明らかな変化と一致している。

1月に野党党首のフアン・グアイドーを国の暫定大統領として認め、マドゥロを打倒するために「すべての選択肢が用意されている」と繰り返し警告した後は、ワシントンからの声明の頻度と強度は最近数ヶ月、目立って減少してきている。

 何が起きているのかを理解する上で重要なのは、ロシアの国営石油会社ロスネフト(Rosneft)である。

「PDVSAは、アジアのロスネフトを通じて原油を販売する方法を見つけた。」とオリベロスは言う。

 なぜ米国はロスネフトに対して行動しないのか?

「ロスネフトは世界第2位の石油生産者であり、米国は市場が不安定化することを好まない。少なくとも当面は、イランに対する制裁がすでに(アメリカに)重くのしかかっているので、ロシアは罰せられずに行動を続けられる方に賭けている。」とモナルディ。

「実際、これはベネズエラをはるかに超えた地政学的なゲームだ。」とスペシャリストは言う。

 モナルディは、短期的に米国が制裁を解除するとは考えていない。

 したがって、生産の初期のリバウンドが今後数ヶ月で強化されるかどうかを決定する上で、ロスネフトの役割は決定的である。

「これまでロスネフトは、ベネズエラの負債を減らすために、PDVSAの石油を売ってきたが、この借金は急速に償却される兆候がある。問題は完全にこれがなくなったときに、何をするかである。」

 ロスネフトがベネズエラ原油の取引に引き続き関心を持ち、その決定的な役割を維持したいのかどうかは明らかではない。

 一方、PDVSAが独自の分野で活動し、在庫を販売するという自主性は、多くの報告書でも疑問視されている。モナルディは、会社の状況を「悲惨」と表現することをためらわない。

 これに関連して、匿名条件の情報筋は、ニコラス・マドゥロ政権が「炭化水素法」を改正し、最終的に外資とPDVSAが組む、いわゆる混合企業を促進させるかも知れないとしている。

 これにより、四半期ごとに更新される制裁措置の特別な免除により、ベネズエラに残る米国のシェブロンなどの企業がベネズエラの油田での役割を強化し、生産量の増加に貢献できるようになるかも知れない。

 

 このような変化は、故ウーゴ・チャベス大統領の時代以降にベネズエラが維持してきた静的なエネルギー政策の変更を意味するだろう。

 このことは、最近政府が続けているように見えるいっそうの自由化の線上にあるだろう。実際、最近の政府は、多くの統制、それは価格や為替の統制のように何年もの間この国の経済を縛り付けているものであるが、この統制を緩和し廃止しているがその効果が出ていない。

(BBC Mundo2019/12/17:Venezuela: qué hay detrás del aumento de la producción petrolera tras años de fuertes caídas)

ラテンアメリカから見た世界と日本

2004年9月から2012年2月までの約7年半の期間、「ラテンアメリカから見ると」のタイトルでブログを維持していましたが、力を入れすぎて目が痛くなり、撤退しました(通巻6175号)。  スペイン語の勉強を再開したこともあって、ブログも再開しました。

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