6210チリ:ほろ苦い勝利(La Jornada紙社説191228)

 2か月にわたる大規模な抗議行動に追われた、チリのセバスチャン・ピニェラ大統領は昨日、独裁者アウグスト・ピノチェトが策定し、1990年に民主主義が復活後も30年にわたり残存してきた1980年憲法に代わる新しい憲法テキストを作成するか否かの国民投票を行うと呼びかけた。これによれば、来年4月26日に行われる投票では、二つの問いに答えることになっている。第一は、新しい憲法が必要か否か、第二には、どのような組織が憲法の原案を書くかで、“完全に選挙で選ばれた構成員で構成される”か、“半分が直接選挙され、残りの半分が議会によって選出される”かである。

 この歴史的な分岐点をに立つとき、憲法の改訂起草は、ミシェル・バチェレの2期目政権(2013年から2017年)時の中心的な提案であったが、右派勢力の反対で機会を逸した。また、10月18日から市街を埋め尽くしたチリの人々の要求の中には司法制度の改革があり、憲法裁判所を始めとした寡頭的な司法組織にも改革を及ぼすべきであろう。

 一方、この呼びかけがチリ人の権利要求への努力に終止符を打つと考えるのは早計だろう。実際、この手段によって抗議を希薄化させようとしているとの見方が大勢である。

 要するに、30年前に政治家トップの合意で否定され実現できなかった真の民主主義に向けた動きと考え、また独裁者の代理人が選挙制度という隠れ蓑のもとに生き残っているチリにおいては、今回の国民投票はチリ国民の勝利と祝うことは可能である。このチリ国民の勝利の暗い反面は、国民の民主化の声を聞こうとしない右派政権である。

La Jornada Editorial(2019/12/28):Chile:victoria agridulce


ラテンアメリカから見た世界と日本

2004年9月から2012年2月までの約7年半の期間、「ラテンアメリカから見ると」のタイトルでブログを維持していましたが、力を入れすぎて目が痛くなり、撤退しました(通巻6175号)。  スペイン語の勉強を再開したこともあって、ブログも再開しました。

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